身近な真空
前ページへ
この記載内容は、アルバック・グループのコミュニティ誌「ULVAC」No.35号のP16〜P17(1998年10月発行)より転載しております。記載内容は発行当時のもので、現在とは異なる場合がございます。

見直される『真空調理法』
----普及目指す真空低温調理研究会----

1970年代後半に、フランスで生まれ、わが国でも、有名ホテル、レストランに次々と導入された「真空調理法」は、1995年頃から半ば休眠状態に入っていたが、ここへ来て、関係者の努力によって真空低温調理研究会(谷孝之会長)が1997暮に発足、その普及をめざしての活動が再び活発化しようとしている。
もともと、゛時間のかかる高級料理も、計画的に調理しておき、短時間でサービスできる゛といったメリットを持った調理法だけに、今回の見直しによって、再び普及が進む可能性がありそうである。
そこで、このページでは、元ホテルハイランドリゾート常務取締役・調理長の谷孝之研究会会長や機器メーカーの東静電気、北沢産業、日本調理機などの方々に、暮らしと真空調理法(和・洋から中華まで)との関わりについて、伺ってみた。
真空調理法

1997年暮に研究会発足

技術と感性が求められる調理の世界でも、作業の効率化、厨房システムの見直しなど、技術革新の嵐が吹き荒れている、といわれる。
このようなおり、わが国で過去十数年来、新しい調理技術の一つとして゛真空低温調理゛の研究を進めてきた人々が、1997年暮に、『真空低温調理研究会』を発足させ、活動を開始した。
研究会の会長、副会長に就任したのは、谷孝之元ホテルハイランドリゾート調理長(現TANIプランニング代表取締役)と長田銃司小伴天社長。いずれも真空調理の導入を熱心に推進してきた方々。また、理事には全国各地の一流ホテル・レストランの総料理長、大学教授、調理コンサルタントが名を連ねており、それらのなかには、既に、第一次ブームの際に真空調理の設備を導入済みの事業体がいくつかあるが、現在、フル稼働中というところは少なく、有名なのは長田副会長の経営する日本料理「小判天」(愛知県碧南市)とホテルコートランド長野(川平秀一総料理長)ぐらい。
東京で開かれた研究会主催の第一回定例講座には、約70人が参加し、実践女子大学生活科学部・宮澤文雄教授の講演「真空低温調理法と衛生管理」ほかを聴講した。依然として、気になる調理法のひとつであるようである。

真空調理法とは…

真空調理法とは、下処理をした素材を真空包装し、そのまま低温で長時間加熱した後、急速冷却するという方式で、今までにない仕上がり状態が得られる調理法の事をいい、冷蔵保存のち提供時に二次加熱を行うというのが、標準的なフロー(図参照)。
フロー この方法は、1979年、フランス人の食肉加工業者であるジョルジュ・プラリュ氏が考案したものとされ、1985年パリ〜ストラスブール間の列車食堂で採用されたのが、商業的な利用の始まりといわれている。その後、フランスを中心に欧州各地で採用するところが増え、現在でも、真空調理を売りものにするレストランがフランスではかなりある。
こうした真空調理については、フランスとは別に、わが国でも、ほぼ時を同じくして、谷氏らが゛低温調理としての真空調理゛の研究を進めてきており、ホテルハイランドリゾート(山梨県富士吉田市)の開業(1986年)準備を進めるに当たって、洋調理長として招かれた谷氏が、初の本格導入を決めた―という歴史的背景がある。この導入によって、経験の浅い厨房要員でも、24時間体制のルームサービスやコーヒーショップ営業を行いたいとする、ホテルの意図は達成されることになった。
そもそもが、フランス料理のフォアグラのテリーヌを、普通のナベやオーブンで調理すると、温度管理がむずかしく、高温になると損傷が大きく目減りすることから、何か良い方法はないか――とフランスで工夫されたのがきっかけという、この手法は゛真空含浸゛の変形ともいえそうだ。


七つのメリット

装置メーカーの北澤産業が出しているカタログ「真空調理」によると、そのメリットは次のように七つある。
1. 素材の美味しさや栄養が失われず、歩留まりも非常に良い。
2. 香り、色が失われず、ムラなく均一に味がつく。
3. 真空包装するので食材の劣化が防げ、一定期間の保存が可能。
4. 時間のかかる高級料理も、計画的に調理しておき、短時間でサービスできる。
5. 大量調理ができるので、ホットメニューを多く導入できる。
6. アイドルタイムに仕込みをして、ピーク時に再加熱するだけで、お客様に提供できる。
7. 厨房スタッフの勤務に、合理化が図れる。
――以上のような利点から、フランスでは、フォアグラの歩留まりが大幅に向上(目減りが約46%から約5%に)したと報告されたほか、東京の服部栄養専門学校に「真空調理」の講座が設けられて、フランスから講師が来日するなど、大いに導入気運が盛り上がった。 そして、新しいホテルの開業時に大型設備が各所で導入され、話題になったが、現在の利用度は必ずしも高くない。その最大の理由は、古くからの日本の食習慣から、「お客さんに提供する料理は、やはり直前に加工したものがベター」とする考えが、依然として存在しているからだといわれる。それに新規導入時に1,0000万〜2,000万円もの設備費がかかる、という点もマイナス要因になっている。


ローストビーフが得意

そうした状況のもとにもかかわらず、谷氏らが真空低温調理研究会をこのほど発足させたのは、「真空低温調理の最大の特色は、グレードの高い料理を、効率的、均一的に提供することにある。
装置 ホテル、外食産業などへの普及はもちろんのこと、゛より美味しい料理を、より多くのの人に゛の原点に帰り、病院給食、学校給食を含めた広い範囲を視野に入れた研究開発や各種活動を積極的に展開していきたい」と考えたからだという。
谷さんによると、「例えば、ローストビーフのような肉料理の場合、肉にどれだけ火を入れるかを決めるのは難しい。オーバークックは味を落としますからね。その点、低温過熱の真空調理によれば、火の入れ具合をマニュアル化し、いつでも同じ物が出せるという利点があります。硬い輸入ビーフ(低脂肪ビーフ)でも、低温長時間調理でおいしくできますからね」とのこと。
また、日本調理機の吉田尚秀設備設計部長は、「真空調理だと、塩分の低い状態でも(少ない調味料でも)、低温下ででも浸透し、おいしい味付けができます。さらに、日持ちもします。」とも語る。
設備のうち、真空にもっとも係わりのある「真空包装機」は、トップメーカーの東静電気の場合、チャンバ容量が6リットルの卓上型(398,000円)から据え置き型146リットルのものまで、用途に応じて各種用意されている。また、到達真空圧力については300〜1,000パスカル位が目安とされており、専用のパック用フィルム(耐熱、耐冷性、120〜130℃〜マイナス10℃に耐えるもの)を使う必要がある。
次の段階の低温加熱では、通常「スチーム・コンベクション・オーブン」が使われるが、正確な温度調整を行うための機能付きが多い。
続く急速冷却では、一般に火入れ後90分以内に、10℃程度まで冷却される(真空冷却を採用する方法もあるが)。また、冷蔵保存は0〜3℃の冷蔵庫で保存するのが最適とされている。

前ページへ
身近な真空真空の歴史真空クイズ真空辞典

© Copyright 2001-2006 ULVAC CORPORATE CENTER Marketing Division All Right Reserved.
身近な真空 真空の歴史 真空クイズ 真空辞典