この記載内容は、アルバック・グループのコミュニティ誌「ULVAC」No.38号のP20〜P20(2000年2月発行)より転載しております。記載内容は発行当時のもので、現在とは異なる場合がございます。
建材ガラスへの真空の応用
さきごろ、東京・有明の東京ビッグサイトで開かれた日本真空工業会、日本真空協会共催「VACCUM
1999―真空展」の主催者ゾーンのテーマコーナーでは、゛環境にやさしい真空技術゛の一例として、日本板硝子の「真空ガラス」と旭硝子の「高遮熱・断熱複層ガラス」が紹介され、多くの来場者の関心を集めた。
そこで、今回の「暮らしと真空」では、日本板硝子株式会社建材カンパニー河原秀夫硝子建材技術開発部長(現職:日本板硝子スペーシア株式会社 社長、2004年3月)と旭硝子株式会社硝子・建材事業本部の竹内嘉彦硝子開発技術担当部長(現職:旭硝子株式会社板ガラスカンパニー日本・アジア本部業務管理室マーケティンググループ主幹、2004年3月)のお話しをうかがい、省エネルギー時代のわが家およびわが社の住居環境は、いかに快適に保てるか、まとめてみた。
両社はいずれも、これら省エネガラス以外の生産工程でも、真空成膜(蒸着からスパッタリング、CVDまで)の導入を、早い時期から始められており、ULVACにとって大切なお客様である。
|
 |
窓の断熱化で快適な環境づくり
世界的に、地球環境保全の意識が高まってきているおりから、地球温暖化防止のため、CO2削減のさまざまな施策が講じられている。既に、省エネルギーのよるCO2削減は、産業界と一般市民の生活の両面で行われていて、特に民間住宅の省エネルギー化は重要な課題となっている。
壁・床・天井を断熱しても、窓などの開口部を断熱していないと、家から逃げる熱の三七%は、窓から逃げていってしまうといわれる。窓を断熱化し、快適な環境を実現することは、省エネルギーによるCO2の削減とエネルギー費用の削減を同時に実現することにほかならない。
このような前提をもとに、以下、日本板硝子、旭硝子両社の省エネガラスの新製品と真空とのかかわりについて、ご紹介します。
日本板硝子の「真空ガラス『スペーシア』 」
日本真空協会(中山勝矢会長)が、毎年選定している真空技術賞の九九年度受賞者に、日本板硝子と豪州シドニー大学のリチャード・コリンズ教授が選ばれた。受賞テーマは「真空ガラス『スペーシア』の開発」である。
この真空ガラスのアイデアは、一九一三年に、コリンズ教授によって公表された。そして、九四年には、真空ガラスの商業生産に関し、シドニー大学と日本板硝子との協力体制がとられるようになり、今日の商業生産に至ったという。
ところで、―真空が熱を伝えない―という原理は、真空魔法瓶などによって、日常生活の中にも生かされている。スペーシアの原理も同じこと。熱の伝わり方には「伝導」「対流」「放射」の形態があるが、この三つの熱の移動を極力を押さえたものが、断熱性がより高いもの―ということになる。スペーシアでは、真空層によって、熱の伝導・対流を防いでいて、特にスタンダードタイプでは、高断熱特殊金層膜(Low-E膜=ローエシビティ膜)によって、放射をふさいでいる。
その真空ガラス『スペーシア』の構造は写真1のとおり。二枚のガラスの間隔(真空層の厚み)は0.二ミリとなっており、これに厚さ三ミリのガラス二枚を使用すると、全体の厚みは六.二ミリとなって、既存の建物、特に低層階住宅の単板用サッシにそのまま入る厚みとなる。次に、マイクロスペーサーは、直径0.六ミリのほぼ円柱状の金属材料が二十ミリ間隔で設置されている。
その主な特徴は、1.断熱性が一枚ガラスの約四倍、複層ガラスの約二倍(エアコンの節約額は一枚ガラスに比べ約六〇%)・2.二枚ガラスのうち部屋側のガラスの表面温度の下がりにくい構造になっているため、マイナス二一度℃まで結露しない(一枚ガラスでは、マイナス八度C)で結露)・3.二枚のガラスが強固に圧着されているため、従来の断熱ガラスに比べて、ガラスの共鳴がなく、防音効果に優れている。(JIS三〇等級をクリア)など。
河原技術開発部長は「現在、真空成膜にあたっては、CVD方とスパッタリング法を併用しており、前者は主として寒冷地向けに、後者は東京以西の温暖地向けの製品に、採用しています。また、いまのところ、二つの工場で月四万平方mのスペーシア生産能力を持っているが、まだ能力に余裕がある。売上は九七年以来、毎年、倍増ペースだが」と語る。
旭硝子の「高遮熱・断熱複層ガラス」
複層ガラスとは、通常二枚(特殊な場合は三枚)の板ガラスの間に、乾燥空気を封入し、断熱性を高めたガラスのこと。ガラスとガラスの間の中空層が断熱性を持ち、室内外からの熱貫流を遮るため、単板ガラスと比べて、室内外の温度差によって失われる貫流エネルギー量は、約半分まで小さくなる。
こうした遮熱・断熱性をさらに高めるために、スパッタリング真空成膜法を採用し、金属薄膜を室外側または室内側のガラスに付けたものが、今回紹介する高遮熱Low-E複層ガラス「サンバランス」と高断熱Low-E複層ガラス「サンレーヌ」。いずれも銀系の薄膜を付けていて、サンバランスの方は主として東京以西の地域の夏・冬季向け、また、サンレーヌのほうは主として関東および甲信越以北の冬・夏季向け寒冷地対策用――として、旭硝子は販売地域を分けて、売り込みが図られている。
複層ガラスの概念が欧州で生まれたのは五〇年ほど前だが、日本でその技術が導入され、旭硝子で生産が開始され始めたのは約四、五年位前から。車両、建築部門向けに、販促活動を進めてきた。しかし、まだ、全ガラス製品に占める割合は一〇%程度で、「住宅・ビル分野でさらなる普及活動の強化が必要」と竹内硝子開発技術担当部長は語る。
サンバランスでは室外側のガラスに、また、サンレーヌでは室内側のガラスに金属薄膜を付けていて、これによって、遮熱と断熱の区分けができる。
旭硝子の三番目の製品は、高遮蔽性能熱線反射複層ガラス「サンルックス」で、窓外側ガラスの空気層に接する面に、ミラー効果で熱線を反射する特殊金属膜(チタン、スズ、ニッケル、クロムなど)をコーティングしたペアガラス。美しいメタリックカラーが特徴で、日射熱の室内流入を防げることから、冷房効率をアップできる。ペアの形でなく、単板でも熱線遮断ガラスとして使える。
「以上の複層ガラスの自動車等車両(既に、鉄道車両には普及)への応用も検討されているが、室内が暗くなる点を解決しなければ……」とも、竹内部長は語る。
世界の複層ガラスの普及状況を調べると、わが国はドイツ、アメリカ、イギリスと比べ一〇分の一〜八分程度。複層ガラスの単価を下げるとともに、PRで知識を深めさせることが、普及のカギになりそうだ。
|