身近な真空
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この記載内容は、アルバック・グループのコミュニティ誌「ULVAC」No.33号のP14〜P15(1997年10月発行)より転載しております。記載内容は発行当時のもので、現在とは異なる場合がございます。

暮らしに不可欠、真空蒸着製品ここにも、あそこにも
----フィルムベース上に金属薄膜付加----

私たちの周りには、金属ではないのにまるで金属であるかのような製品をよく見かける。プラスチック、布、紙、ガラスなどの表面にメタリックな質感を持たせた製品のことだ。光輝いているのは「真空蒸着」という技術が応用されているからだ。そこで今回は、装飾用、食品の品質保持など、生活に役立っている蒸着フィルム製品の数々を紹介する。
取材にお伺いした東洋メタライジング株式会社三島工場は、昭和33年の創業以来、ULVACの真空蒸着装置をご採用いただいており、メタリック加工を施した包材や工材用を専門に製造されている。同工場包材部の渡邊英男室長、寺西正芳氏と工材第一事業部の望月正行室長に、真空蒸着製品と暮らしの係わりについてお話しをお伺いした。
様々な真空蒸着製品

用途の広いアルミ蒸着

蒸着とは、高真空の中で金属を加熱蒸発させ、ベースとなる素材の上にこの蒸発した金属の薄膜を形成する技術。この技術を応用してつくられた蒸着製品は、私たちの身の周りにたくさん活躍している。
蒸着フィルムの断面 たとえば、ビデオテープやカセットテープなどの磁気テープは、フィルムに磁性体金属を蒸着したもの。また、コンデンサはその蒸着フィルムを何層にも巻いたもので、電界シールド材料や帯電防止材料なども蒸着製品の一つだ。蒸着はさまざまな電子部品に応用されているが、暮らしに密着した身近な生活用品にも応用されている。
生活用品の多くは、蒸着材料としてアルミニウムが一般的だ。フィルムはポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン、ナイロンなど、使用目的に応じてそれらの素材が選ばれる。フィルムの幅は通常0.6〜3m、ロール一巻の長さは3万m以上にも及ぶ。この長大なフィルムベース上に、原料となるアルミを1,400℃以上(融点約600℃)に加熱蒸発させ、厚さ0.1ミクロン以下の薄くて均一なアルミ膜をつけたものが製品となる。

ファッション、装飾用―軟らかい素材にメタリック効果

様々な蒸着製品 真空蒸着は、プラスチック、布、紙、ガラスなどさまざまな素材の表面にメタリックな質感を持たせることができるので、衣料や装飾品に加工されている。
「直接素材に蒸着する場合もあれば、蒸着したフィルムから金属膜を目的の製品に転写する場合もあります。転写フィルムは部分的な装飾を製品に施したい場合、複雑な形状をした製品に用いられています。」と望月室長は語る。
財布、ハンドバック、小物入れ、ベルト、婦人靴などは、皮革や合成皮革類に転写したもの。華やかで優雅な色調、光沢感を必要とする製品に用いられている。
色の種類は、アルミ素材自体の色である銀色はもちろんのこと、金や緑、青、赤など実に豊富だ。着色は、蒸着する上下の層に色の着いた塗料を加えることでカラフルなメタリック製品となる。さらに、干渉層を加えることでデザイン的な模様をつけたり、見る角度によって画像が変化するホログラム効果を狙った製品など、そのバリエーションは実にさまざま。

食品用―グルメ時代に不可欠、酸化防止、防湿効果

「食品やお菓子のパッケージにも蒸着フィルムが使われています。メタリックな光沢のあるパッケージは、高級感を与えるのがその目的ではなく、日光を遮り、酸素や水分の透過を防ぐ酸化防止のために使われます。これにより、食品の品質保持期間を伸ばすことができました。」と寺西氏は語る。
さらにボイル殺菌やレトルト殺菌用にも使われている。これら蒸着シートは印刷にも適しており、紙への印刷に比べインキが沁み込まないので少ない塗料で、しかも鮮やかな発色が可能となり、蒸着面の金属光沢との相乗効果により高級イメージを与える。
最近では、中身が見える透明バリア膜が開発されており、もちろんこれも蒸着フィルムの一種である。

住宅建材用―豊かな居住空間を生む遮光、断熱効果

蒸着フィルムにセットされるフィルム アルミ蒸着は、熱線(赤外線)反射効果が大きいため、住宅建材にも広く使われている。窓用遮光フィルムや断熱カーテン、配管保温材など住宅建材はもちろんのこと、消防服や耐熱手袋、ビーチマットやクーラーボックスなど、さまざまな製品に利用されている。また、従来の製品よりも軽い素材に蒸着できるので、軽量化され、快適性に富んだ製品も多くなっている。
夏の日差しを遮り、室内をムーディに演出する窓用の遮光フィルムは、ある領域の波長の光を吸収する金属薄膜の性質を応用したものである。

エコロジー用―可燃ゴミに出せる環境保護効果

フィルムに蒸着された金属の厚さはおよそ数十ナノメーター(1ナノメーターは10の-9乗メートル)。金属箔を張り合わせる方法と比べてわずか数千分から1万分の1の薄さである。
蒸着フィルムは、薄膜であることから、原材料の金属量が極めて小量なため、焼却ゴミとして処分することができるので、大気への汚染を減らし、炉内の損傷を防ぐメリットがある。したがって、蒸着フィルムによるパッケージ材は多方面で注目されている。
近年、リサイクル法が制度化され、国をあげて環境問題がますますクローズアップされている。蒸着フィルムは、環境保護の観点からも今後、大いに利用されていくことになりそうだ。


ニューライフ用―電子レンジで焦げ目、耐高温効果

蒸着フィルムは、食品用パッケージに使われることが一般的だったが、最近では調理機能としての新分野に活躍している。
東洋メタライジングでは、電子レンジなどに利用されているマイクロ波により発熱する蒸着シートを開発している。ピザや餃子のように焦げ目を付けたい食品や、フライドポテトのようにサクサク感を重視する食品などをこの蒸着シートにのせ、電子レンジで゛チン゛するだけ。この特殊なシートは、260℃もの高い発熱温度でも十分耐えることができるので、調理時間が短縮される。コンビニエンスストアや忙しい現代人にうってつけの製品だ。
この取材を通して、私たちの周りには、真空蒸着を応用した製品が実に多いことを再認識した。この紙面からほんの少しだけ目を周りに移してみよう。目に入ったもののいくつかはこの技術が使われている製品に違いない。そして、これからも私たちの生活の中に真空蒸着技術の可能性は広がっていくことだろう。

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