この記載内容は、アルバック・グループのコミュニティ誌「ULVAC」No.40号のP16〜P17(2001年3月発行)より転載しております。記載内容は発行当時のもので、現在とは異なる場合がございます。
真空蒸留で育毛剤
----ライオンの「薬用毛髪力」----
| わが国の育毛剤市場は、1996年6月の米国生まれの医薬品系商品の初参入によって、大きく規模が拡大し、現在、500億円を越すまでになった。しかし、この高シェア製品は、もともと“壮年性脱毛症向けの発毛剤”であり、体質的に使用できないという人々がかなりいる。代表的な事例は、65歳以上の高齢者や高血圧、低血圧の人には使えない、特定の脱毛パターンの人にしか効果がない−などの点。そういうことがわかるとともに、先発の国内育毛剤メーカーは、競って、シェア奪回のための新製品を発売している。そうした市場のなかで、今回、注目したのは、86年(昭和61年)「薬用ペンタデカン」の商品名で発売し、94年(平成6年)には「薬用毛髪力」と改名、以来、添加物を変えて効力を高めてきているライオンの育毛剤を採り上げてみた。同社では2001年3月からM型脱毛にも効く新製品「薬用毛髪力エムパワー」を発売している。これらの製品は、発売当初から、真空蒸留法によって抽出したペンタデカン酸グリセリド(PDG)を主成分としているところが最大の特徴である。
|
 |
毛髪は人生を決める要因にも
遠い昔から、“豊かな黒髪”は、美女の条件の一つにあげられてきた。現代社会の男性にとっても、髪の毛は人生の明暗を決める要因の一つでもあるといって、過言ではなかろう。そこで、まず、人間の頭髪について、少し学んでみよう。
●髪の毛の仕組み
毛髪の構造−人間の髪の毛は平均約10万本生えていると言われる。では毛髪はどのような構造になっているのだろうか。(図1)
毛髪は、大きく分けて皮膚の表面に出ている“毛幹”と、皮膚内部にある“毛根”に分けられる。毛根の根元は、球状にふくらみ、毛球と呼ばれている。毛球の下の凹んだ部分は毛乳頭と呼ばれ、毛細血管から栄養を取り込み、毛球内部にある毛母細胞が分裂をくり返えし、次々に細胞を押し下げ、毛髪は成長する−という。
ヘアサイクル(毛周期)とは−髪の毛が生えてから三〜六年間成長すると、細胞分裂がストップし、髪の毛がやがて抜け落ちるが、また新たなうぶ毛が生える−というのがサイクル。
(図2)に、成長期→移行期→休止期→脱毛に至るプロセスを示す。ヘアサイクルを四年としても10万本÷(365日×4年)=約70本は毎日脱毛している計算になる。個人差があるが、一日に50〜100本の抜け毛は普通のことで、特に心配する必要はないという。また、年間を通じて、九月、十月が最も抜け毛の多い季節である。
男性型脱毛症の原因としては、1・発毛に必要なエネルギーの生成を男性ホルモンが阻害している、2・血行や栄養の障害 、3・ストレス状態が蓄積すると、自律神経がアンバランス状態になり、血管に悪影響を与える、4・体質の遺伝、5・フケや皮脂などの汚れで毛穴がつまる−などがあげられている。
では、脱毛を予防するためには、どうすれば良いのだろうか。
脱毛予防は規則正しい生活から
●髪や頭皮の手入れ
まず「髪や頭皮の手入れ」では、
1 髪や頭皮を清潔に保つ、
2 育毛剤を使う、
3 血行促進のためにマッサージをする−ことが必要。
また、「生活習慣」としては、
1 規則正しい生活を=髪の細胞分裂は夜九時前後がピーク。夜ふかしをすると、毛母細胞の分裂が低下してしまう。
2 ストレスをためない生活を!
3 タバコは控え目に=ニコチンが血管を収縮させてしまうため、タバコも若い頃からの脱毛を促進すると考えられている。
4 バランスの良い食事を=健康な髪を作るには、良質のたんぱく質を食べることが必要。シスチン、メチオニンを多く含むたんぱく質が理想。
5 無理なダイエットはしない。
−が求められる。
人工飼料研究から生まれたPDG
以上のような前提のもと、いよいよ「育毛のためのケア」が求められるわけだが、そこで主役を演ずるのは育毛剤。
今回はライオンの「薬用毛髪力シリーズ」について紹介する。その薬用(有効)成分は「ペンタデカン酸グリセリド(PDG)」である。ライオンによると、このPDGは、実は人工飼料の研究から生まれたもの。
一九七〇年代初頭、世の中では「二一世紀には世界的な食糧危機が訪れる」と、食糧問題が話題になっていた。そのため、ライオンでは、食糧危機に備えて、石油から人工飼料を作り出す研究に取り組んでいた。そこで、PDGを餌に混ぜてラットに与えたことがあった。すると、PDGは栄養源になるだけでなく、その摂取によってエネルギーを作るのに重要な酸素が活発になることが判った。しかし、その頃は、この作用の使い道がなくて、その後、この人工飼料の研究は、お蔵入りとなってしまった。
一九八〇年代に入り、新しい育毛剤の開発に取り組むことになった。そして、当時の研究グループは、抜け毛を一から突き止めようとした。さまざまな程度の脱毛状態の人を数百人探し出し、毛髪を引き抜かせてもらい、研究を進めたという。髪の毛を引き抜くと、根元に白いふくらみ(毛包)が付いてくる。毛包の中には、エネルギーを作るのに重要な酸素があり、脱毛が進行している髪ほど、その活力が弱まっていることが判った。
研究グループは「新しい育毛剤のカギは、毛包にエネルギーを作る物質であること」を確信した。そこで、エネルギー代謝に関係しそうなものを中心に、数百種におよぶ物質が検討された。その時に、研究者がふと気付いたものがPDG。そして、このPDGを塗ってみたら、本当に毛が生えてきたのだという。
その後、臨床試験などにより、PDGの優れた有効性を科学的に立証し、育毛剤の新たな有効成分として承認を得て、製品化に至ったという。
●「薬用毛髪力エムパワー」とは
−新製品は、男性の脱毛パターンに注目し、いわゆる“M型脱毛”にも効果があるとして、二〇〇一年三月に発売。日本人の男性型脱毛症の脱毛パターンは、大きく分けると前頭部からM字型に薄くなる「M型脱毛タイプ」、頭頂部からO字型に薄くなる「O型脱毛タイプ」、両者複合の「MO型脱毛タイプ」の三つがある。そして、日本人の中でいちばん多い脱毛パターンはM型脱毛タイプで、若い世代ほどM型が多くなる。
M型脱毛に対する効果が科学的に認められているのはPDGのみである。そこで、脱毛パターンに注目し、日本人に最も多いM型脱毛にも効果がある育毛剤「エムパワー」を発売したもの。
新商品の特徴は、PDGに四つの付加成分−従来のビタミンE誘導体(血行促進)、コレウスエキス(保湿成分)に加えて、βグリチルレチン酸(抗炎症成分)と、イソプロピルメチルフェノールを新配合している点。育毛剤は脱毛パターンで選ぶ時代になったといえそうだ。
『真空蒸留』とは−遠心式分子蒸留を中心に解説−
物質を混合状態から組成成分に分離する方法はいろいろあるが、現在、最も広く利用され、かつ効果の大きいのが蒸留である。
特に、真空蒸留は、熱的に不安定な物質や通常の蒸留装置では分離できない物質を、真空中で効率良く分離するために使われている。真空にすると、沸点が大幅に下がって反応温度よりも低い温度で蒸発させることができるからである。その真空蒸留装置には、「流下膜式」と「遠心式」があり、それぞれ特徴を持っているが、液体を蒸留するには『遠心式分子蒸留装置』がよく利用される。
これは、高速に回転する円錐状の加熱されたロータ(蒸発面)に原液を供給し、簡単に均一な液膜を作り出せる。この均一な液膜を加熱して、短時間のうちに軽い残留物を蒸発させ、向かい合っている凝縮面で凝縮させることができる。一方、重い残留物は蒸発しないため、そのままロータの先端まで移動し、ロータから残留物を集める桶の中に流れ込んで、外部に排出される。通常、ロータと凝縮面は0.1パスカルの真空下で、しかも至近距離に向い合っているので、圧力損失は極めて小さく、沸点を大幅に下げることができる。
遠心式分子蒸留装置は、魚肝油からビタミンAを、脂肪酸からモノグリセライドなどを蒸留するために使われてきたが、最近は、その長所を生かして、化粧品、医療、食品、石油化学、繊維など、広い分野への応用が進んでいる。
|